旅費交通費、もれなく仕分けすることにより、会社側にも社員側にも節税のメリットがあります。
交通費との違いや仕分けの際の注意しなければいけない点などを詳しく解説しました。
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交通費と旅費交通費の違い
通勤手当、交通費、出張交通費も全て会計上の勘定項目は「旅費交通費」となります。では、なぜ区別して考えるべきなのでしょうか?
- 通勤手当
従業員が出社などの通勤に要する金銭を会社が負担するもので法律上の決まりはありませんが、福利厚生の性質として支払われます。一般に給与に上乗せされて支給され、所得税が発生します。
- 交通費
通勤や営業などによって取引先などへの移動にかかるバス代・電車代・タクシー代、通勤定期代、駐車場代などを指します。
- 旅費交通費
本来業務を行う勤務地以外の場所での業務に発生する、交通費などの経費を指す勘定項目の名称です。
旅費交通費には、通勤手当も交通費も同じ勘定項目に含まれます。
通勤手当、交通費、出張交通費を区別すべき理由
本来旅費交通費の勘定項目となるこれら3項目をなぜ区別すべきかというとそれは、課税や保険料が関わる項目がことなるためです。
- 「社会保険料」
4月5月6月の給与の平均を基にして会社が算定届を出すことによって、社会保険料の額が確定します。
通勤手当に該当しない旅費交通費に分類された交通費は従業員の社会保険料額に影響を与えないため、有利な取り扱いになります。
- 「所得税」
給与や手当の合計から、社会保険料を引いた基礎額によって所得税は計算されます。
手当は所得税の対象となりますが、通勤手当に関しては、限度額の範囲内であれば非課税となります。
そして旅費交通費は所得税の算定に影響を与えません。支払いの性質上旅費交通費に分類される交通費は従業員の負担にならないようきちんと分類すべきとなります。
旅費交通費は移動旅費以外も含まれる
旅費交通費というという名称から出張などにかかる交通費のみと勘違いしそうですが、海外旅費や赴任旅費も含まれます
出張旅費
業務に関することで、遠隔地出かける際にかかる経費を言います。出張手当や手当、交通費を含みます。
海外旅費
海外出張にかかる、旅費・日当・日当などの経費も旅費交通費で処理します。
ただし、海外出張にかかる経費は国内出張とことなり消費税は発生しないので、非課税で処理します。
赴任旅費
転勤に伴う旅費・赴任手当・荷造り運送費(社内規定がある場合、赴任に帯同する家族の交通費や宿泊費なども旅費交通費に分類できる)、単身赴任者の規制旅費(所得税の課税対象)も旅費交通費として処理します。
旅費交通費に含まれるもの
運賃
業務上必要な出張にかかる移動交通費は、旅費交通費として処理します。
(新幹線・飛行機・電車バスなどの公共交通機関の運賃など)
社員がSuicaなどの交通系電子カードなどで支払った場合、利用履歴の印刷を領収書の代わりとして使用できます。
領収書のない公共交通機関で発生した交通費の場合は、旅費交通費清算書の記入により領収書として利用できます。
その際は、「日付、交通機関、訪問の目的など」が明記されていないと領収書として認められないので、都度きちんと記載されているかチェックが必要です。
日付 | 交通機関 | 区間 | 往/片 | 金額 | 業務内容 |
2022/03/22 | JR | 新橋~目黒 | 往 | ¥440 | 鈴木商事で打ち合わせ |
2022/03/24 | JR | 新橋~渋谷 | 往 | ¥336 | 高橋物産で打ち合わせ |
出金伝票などによって、領収書が出ない場合での経費の支払いも認められますが、あまりに頻繁の利用がある場合税務署からチェックが入る場合があります。
出金伝票を使用する場合、旅費交通費清算書を添付するか。出金伝票自体に「日付、交通機関、訪問の目的など」を明記することが必要です。
高速・有料道路代金、ガソリン・パーキング代、レンタカー
基本的に出張に使用する車での移動での高速・有料道路代・ガソリン代・コインパーキング代などは、旅費交通費として処理できます。
が、車両費や燃料費という勘定科目もあるためにどこに分類するか迷うことがあるかもしれませんが、どれに分類するかという細かい規定があるわけではないので、社のルールにのっとって分類してください。
また接待などに使用した場合のタクシー代は、「交際費」として仕分けされますので注意しましょう。
出張手当
社内規定により制定されている場合、出張に伴う日当・食事代などが定額で定められている場合、旅費交通費として処理されます。
規定で定められていない場合所得して日当や食費は所得として処理されるため、所得税が課税されることになります。税理士などに相談の上、自社の事情に応じた社内の規定をきちんと明確化しておくことをおすすめします。
宿泊費と食費の扱い
出張の際に宿泊した宿泊費は領収書に基づいて実費で清算し、旅費交通費として分類しますが、社内旅費規程がある場合、それに基づく定額も宿泊費も旅費交通費として処理します。
出張に伴う食事は、基本経費として認められませんが、宿泊費と食費はセットプランでないものを選択してもらい、領収書は分けて出してもらうようにしてもらいましょう。
取引先との会食などは接待費として処理できるので、業務に必要かどうかで規定を理解してもらいましょう。
パスポート取得手数料、空港使用料、ビザ取得費
海外転勤の際に必要となるパスポート、航空券、ビザなどは社内の規定によって詳しく定められている場合、それにそって支払われます。
- パスポート取得手数料
収入印紙と都道府県証紙代がかかります
- 航空券以外に飛行機に乗るときにかかる料金
空港使用料と燃料サーチャージ代金が請求されます
- 国によってはビザが必要
インターネットや電話で渡航先の在日大使館や領事館でまず確認します。
申請にはパスポートが必要ですので、先ずパスポートの取得が必要です
申請期間の長い国では1か月かかる場合もありますので、早目の準備が必要です。
その他
通常の通勤にかかる定期代なども旅費交通費に仕分けされます。
簿記による旅費交通費の勘定科目、仕分けの仕方
旅費交通費のよくある仕分け
以下によくある旅費交通費仕分けの例を示します。
①「従業員が急な一泊二日の出張となり、仮払金を10万円渡した。出張から戻って、新幹線代往復30,000円、宿泊代9,800円、接待での会食36,000円支払ったと報告を受け、24200円返金があった」
先ずは概算で仮払金として処理します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 | ||
3月4日 | 仮払金 | 100,000 | 現金 | 100,000 | なんば電気 出張旅費仮払い |
報告があった後、きちんと旅費交通費などを仕分けします。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 | ||
3月4日 | 旅費交通費 | 39,800 | 仮払金 | 100,000 | |
3月4日 | 交際費 | 36,000 | |||
3月4日 | 現金 | 24,200 |
②難波電機への出張による新幹線代30,000円をクレジットカードで支払った
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 | ||
3月4日 | 旅費交通費 | 30,000 | 未払い金 | 30,000 | なんば電気 出張旅費○○カード |
3月27日に、2月6日~3月5日分の○○カードの引き落としが分で3月4日の旅費交通費が引き落とされたので、以下のように仕分けします。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 | ||
3月4日 | 未払金 | 30,000 | 普通預金 | 30,000 | 2月6日~3月5日○○カード引き落とし |
同じ移動でも旅費交通費に仕分けできないもの
以下のものは出張先で移動手段として使用されたとしても旅費交通費としては仕分けされません。
- 接待に利用したタクシー代→交際費
- 消費者を対象として招待にかかる交通費→広告宣伝費
- 社員旅行→福利厚生費
- 社員研修のためのバス移動や宿泊費→研修費
消費税の扱いについての注意点
- 公共交通機関の運賃には消費税があらかじめ含まれています。
- 宿泊費とまとめて清算する場合、宿泊費は内税ではない場合もあるので、別清算するように心がけましょう。
旅費規程にないもの
出張に対する規定で日当・昼食などの食費などが条項で決められていない場合、支払われた日当や食費は所得として見なされて、所得税がかかることとなります。
法人と個人事業主、仕分けの違い
旅費交通費の項目で法人と個人事業主で大きく違う点は、
- 出張手当
個人事業主は自分に対し、出張手当を出すことができません
- 旅費規定による定額出張費の設定
旅費規程で定められる定額の旅費交通費は、企業側は全額経費として計上出来、社員は非課税で受け取ることができます。
- 事業用の現金の持ち合わせがない場合、旅費交通費をプライベートの財布から支払った場合「事業主借」という項目が個人事業主のみ使用されます。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 | ||
3月4日 | 旅費交通費 | 30,000 | 事業主借 | 30,000 | 難波電機出張、プライベート財布から一時支払い |
旅費交通費 まとめ
旅費交通費には、通常の通勤交通費や交通費、出張にかかる経費など全ての項目が含まれることが分かりました。
しかし細かく分類するのは、「経費計上できる項目か?」「所得税として課税されるか?」「社会保険料の算定額に含まれるか?」によって会社や従業員の課税額や保険料支払い額に大きく影響が出るために間違いなく仕分けし計上する必要があるためでした。
もし、経費清算に不安があるようでしたら、上手にソフトを活用するのもよいと思います。